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Adobe Flash非公式テクニカルノート

力のモーメント

ID: FN1009002 Product: Flash CS3 and above Platform: All Version: 9 and above/ActionScript 3.0

かたちの変わらない固いもの(「剛体」といいます)を回転させるとき、その力のかかり具合は「力のモーメント」という考え方で表されます。柄の細いドライバーと太いドライバーとでは、同じ力を加えてもねじの回しやすさが変わります。その回しやすさが、力と区別された力のモーメントで示されるのです。インスタンスに何らかの力のパラメータを働かせて回転させようとするとき、この力のモーメントの考え方が用いられます。


01 力のモーメントの大きさ
力のモーメント」は、力の能率とも呼ばれます。その大きさについては、小学生のとき天秤の釣合いとして習いました。天秤が釣合うのは、重りと支点からの距離の積が両側で等しいときです。

天秤てこの原理を用いたはかりです。したがって、てこも同じように、力を加える位置(力点)が支点から遠いほど、力の働きを大きくできました。ただ厳密には、力の方向を考える必要があります。てこの棒と同じ方向(支点と作用点を結ぶベクトルに平行)に力を入れても意味がありません(図001上図)。もっとも力のかかり方が大きいのは、棒に対して垂直(支点と作用点を結ぶベクトルに垂直)に力を加えたときです(図001下図)。

図001■てこと力を加える向き
図001上図
図001下図

力のモーメントの大きさは、一般につぎのように定められます。下図002のように、てこの支点に当たる回転の軸をO、力を加える点をPとしてOPをベクトルrで表します。点Pにベクトルrと成す角θで加えた力をベクトルFとするとき、ベクトルrに平行な成分F//と垂直な成分Fに分けます[*1]。すると、前述のとおり、F//は力のモーメントには関わりません。

つまり、力のモーメントMの大きさ|M|は、ベクトルrとFの大きさとの積になります。Fの大きさは|F|sinθです[*2]。したがって、つぎの式が導かれます。

|M| = |r||F| = |r||F|sinθ

図002■力のモーメントの大きさを求める
図002

[*1] ベクトルの加減算については、物理のかぎしっぽ「もう一度ベクトル2(ベクトルの読み書きそろばん)」をご参照ください。

[*2] 三角関数については、「座標と三角関数と、時々、ベクトル」をお読みください。


02 力のモーメントが表すベクトル
力のモーメントMはベクトルです。前掲図002にしたがえば、それはベクトルrとFとの外積r×Fで表されます(記号「×」は乗算ではなく外積を意味します)[*3]

M = r×F

外積r×Fの大きさは、前項で示したとおり|r×F| = |r||F|sinθです。ベクトルは、大きさに方向が加わります。ベクトルMの向きは、ベクトルrとFのどちらとも互いに垂直で、回転の軸を示します(図003)。回転軸ですから、この方向に回る訳ではありません。ベクトルMの向きに右ねじを締める回転になります。

図003■力のモーメントが表すベクトルの向きと回転
図003

3次元空間のベクトルとしてr(rx, ry, rz)とF(Fx, Fy, Fz)の成分が与えられたとき、外積r×Fはつぎの式で導かれます。なお、この式からわかるように、外積では一般に交換法則は成立ちません。ふたつのベクトルの順序を入替えると成分値の正負が逆になり、外積のベクトルの向きは反転します[*4]

r×F = (ryFz - rzFy, rzFx - rxFz, rxFy - ryFx)

2次元平面で考えるときには、ベクトルr(rx, ry, 0)とF(Fx, Fy, 0)のz座標(成分)値は0です。上記の計算式にしたがえば、外積r×Fのベクトルはつねにz軸と平行になります。つまり、外積のxおよびy座標(成分)値は0です。回転の方向は、z座標(成分)値の正負でわかります[*5]

r×F = (0, 0, rxFy - ryFx)

2次元平面における回転を力のモーメントにより表現した例としては、「インスタンスをドラッグで回して動かす」をご参照ください。

[*3] 力のモーメントについては、つぎのような解説が参考になります。わかりやすい高校物理の部「力のモーメント」、物理学解体新書「力のモーメント」、One-point アドバイス(物理)「ベクトル 内積・外積 その物理学的イメージ」。

[*4] ベクトルの外積については、「2次元平面で座標が三角形の内側にあるかを調べる」をご参照ください。

[*5] 2次元平面におけるベクトルの外積も別に定義でき、結果はベクトルでなくスカラー(実数)とされます。その値は、3次元空間におけるベクトルの外積のz座標(成分)値に等しくなります(前出注[*4]に引用したドキュメントの注[*4]参照)。


作成者: 野中文雄
作成日: 2010年9月28日


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